展示施設とイラストの蜜な関係

arakawa 河川舟運図

 

今回は、展示施設には不可欠であるグラフィックの存在について書かせていただきます。

かなり昔の話で恐縮なのですが、荒川について知っていただき、さらに、好きになっていただくきっかけの場として、”展示資料館と、公民館の中間領域にあたるようなコミュニケーションスペース”つくりのお手伝いをさせていただいたことがあります。

上の写真が入り口から内部空間を見た写真です。また、下のイラストはこの施設内で展開した展示パネルのうちの1つになります。この絵図は江戸という街とそこに暮らす人々ががどれだけ川と密接に寄り添い、暮らしを支えていたのか?を知っていただくことを目的として作成したものです。通常の展示解説パネルですと、上流、中流、下流などの区分に従って資料と文章でかっちりと説明してゆくとか、河川の利用の方法ごとで説明してゆくなど、情報ごとに整理して理路整然と展開してゆくのが常ですが、私たちはこの施設に対して、知ることよりも親しみを感じて、さらに好きになっていただくということを最も重要なミッションとして設定していました。したがって、この場で展開する展示パネルでは、もっと直感的に観ることができ、かつ楽しく発見しながら観ていただくことを重要視しました。この絵図の中に描かれている内容としては、上流の伐採や、鉄砲堰、筏流しの様子。中流部の河岸の賑わい、様々な用途の美しい川舟。下流では、橋詰や川の賑わい、河川舟運が無ければ江戸の繁栄は無かったことも感覚的に解るはずですし、海に面するところでは製塩作業や江戸前の魚などの漁も行っているといった盛り沢山な内容になっています。また、江戸という時代を中心にしながらも時間軸を越えて、川と私たちの暮らしが現在も繋がっていくイメージを醸し出そうと考えました。高瀬舟と蒸気船と現在の観光遊覧船が混在していますし、10mも離れていない筈なのに帆のはらみが逆になってるなどの不都合よりも「くらしと河川の汲めど尽きせぬ関係性」を表現したかったのです。

このように施設のもつ役割と目的を実際の空間で体感し、参加していただくためには、イラストやアートとスペースデザインは絶対不可欠な蜜な関係となっているのです。